NHK交響楽団の『シェヘラザード』が無料配信されています!(9/15まで)
配信開始からもう時間が経ってしまってあと数日しか残っていないですが、NHK交響楽団による『シェヘラザード』(リムスキー・コルサコフ作曲)のコンサート映像が無料配信されています!
実は私もこの公演に行きました。映像と同じ回ではないのですが。
以下のサイトで見られます。登録などは何も必要ありません。アクセスするだけ!
https://www.nhkso.or.jp/video/
以前の記事で、クラシック音楽は長いと飽きるので初心者には短い曲がお勧め、というようなことを書きました。
この曲は50分くらいあり、比較的長い曲なのですが、クラシック初心者にも聴きやすい曲だと思います。
その理由は
- 千一夜物語(アラビアンナイト)という物語をベースにしていて、イメージが湧きやすい
- メロディがはっきりしていてわかりやすい
- メロディがロマンティックだったりリズミカルだったり激しかったりで飽きさせない
- 「シェヘラザードの主題」と呼ばれる独奏ヴァイオリンによるメロディが各楽章に現れるため、一貫性が感じられる
一つずつ解説してみたいと思います。ちょっと長くなりますが、気になる方は続きをどうぞ。
1. 千一夜物語(アラビアンナイト)という物語をベースにしていて、イメージが湧きやすい
クラシックの音楽は『交響曲第3番』などのように、無味乾燥なタイトルの曲が多いですが、この曲は千一夜物語(アラビアンナイト)がテーマになっています。
この曲は全部で4楽章から成っていますが、それぞれにタイトルがついています。
I. 海とシンドバットの船
II. カランダール公の物語
III. 若い王子と若い王女
IV. バグダットの祭り・海・船の難破
作曲者のリムスキー・コルサコフ自身が「作曲者は、何らかの物語について逐次的な模写にこだわるものではなく、聞き手が思いおもいの幻想を探りあてるための手がかりになる標題をあたえたにすぎない」(『リムスキー=コルサコフ 交響組曲 シェヘラザード』全音楽譜出版社)と述べているように、厳密にストーリーを音楽で描こうとしているわけではありません。
なので別に元ネタのストーリーを知っている必要はありません。(私も知りません…)
オリエンタルな感じだったり、海を船で進んでいくイメージだったり、想像力を掻き立てられるような曲になっています。
2. メロディがはっきりしていてわかりやすい
メロディがはっきりしていて「歌える」ことも大きな魅力です。
例えばベートーヴェンの『運命』は最初の「ダダダダーン」というところは誰でも知っていると思いますが、そのあとのメロディを歌えるという人はあまりいないのではないかと思います。
「ダダダダーン」の部分が有名すぎるということもありますが、歌おうと思ったら、技術的にとても難しいのです。テンポは速いし音域は広いし、音程も難しいし、さらに複数の楽器が主旋律をバトンのように受け渡していたりして、とても複雑です。もちろんそういう複雑性が魅力の一つであることは間違いないのですが、親しみやすさという点においては「メロティが歌える」というのは重要です。
もちろん最初から最後まで歌えるというわけではありませんが、『シェヘラザード』には思わず口ずさみたくなるようなメロディが溢れています。
3. メロディがロマンティックだったりリズミカルだったり激しかったりで飽きさせない
いくらメロディが美しいと言っても、50分も同じようなメロディを聴いていたら誰だって眠くなってしまいます。
『シェヘラザード』は前述のように物語をベースにしていることもあり、映画の場面転換のようにいろいろなシーンが次々と現れるような構成になっています。
明るい・暗い、優しい・恐ろしい、リズミカル・ゆったり、など、いろいろな旋律・リズム・和音が現れるため聴き手を飽きさせません。
でも、実はこれは他の曲でも同じなんですけどね。1時間ずっと変わらない単調な曲などというのは拷問以外の何でもありませんから。
そうは言っても、『シェヘラザード』の場合はアラビアンナイトを念頭に置いている、という事実があるので、想像が膨らみやすくてより飽きにくいとは言えるのではないかと思います。
4. 「シェヘラザードの主題」と呼ばれる独奏ヴァイオリンによるメロディが各楽章に現れるため、一貫性が感じられる
いろいろなシーンが目まぐるしく現れるのですが、これを一つの曲としてまとめている仕掛けがあります。
それは「シェヘラザードの主題」と呼ばれる、繰り返し現れるメロディです。
バイオリンの独奏で、マロさんこと篠崎史紀さんが弾いています。試しに、曲の冒頭(1:30~)と曲の一番最後(45:30~)を聴いてみてください。
このメロディは「シェヘラザードが王に物語を語りかける」ことを意味しているのだそうです。このメロディが形を少しずつ変えながら何度も登場することで、いろいろな物語をシェヘラザードが語ることで全体のストーリーが進行するという、この曲全体の骨格を形作っています。
…ということで、色々と説明してきましたが、最後に結局何が言いたいかというと、
「私はこの曲が大好き!」
なのです。
あーだこーだ言っても結局音楽は趣味の問題です。聴いて気に入らなくてもそれは仕方がありません。でも、ちょっとでも聴いてみたい、と思ってもらえたら(そして実際にちょっとでも聴いてもらえたら)幸いです。
最後に、N響の配信期間が終わったときのために、もう一つ別の映像を貼っておきます。
Rimskij-Korsakow: Scheherazade ∙ hr-Sinfonieorchester ∙ Julian Kuerti